ニートにハーブティーは要らない

ニートにハーブティーは要らない

思ったことを書いています

2022→2023

2022年は忙しかった。 仕事を変えた。 どこの組織に溶け込むにも協調性や自分を客観視する力はとても大事だが、それがうまくできたりできなかったりして、凪いだ穏やかな海のような環境の集団に突如として緊張感をもたらしてしまうようなところがある、わた…

ない

あたたかいパジャマがない。捨てたからである。 捨てたときのことはよく覚えている。捨てたのは夏のことで、それはフリースのもこもこした上下茶色のパジャマだったんだけど、そのとき蒸し暑かったのもあって手触りが異常なほど不快に感じられ、小さな毛玉も…

電気売りの青年

在宅勤務もひと段落した昼下がり、暑いけど部屋をキンキンにしてサッポロ一番みそラーメンでも食べようとキッチンに行くと、外から声が聞こえてきた。男の声で、何やら切実に「あの~、お~い」みたいなことを言っている。とりあえず鍋に水を入れて火にかけ…

選びなおされた言葉たち──『水中で口笛』工藤玲音 第一歌集   

作家で歌人の工藤玲音さんが歌集を出した。 わたしは、エッセイにしろちょっとした連載にしろ短歌にしろ、この人の書くものが好きで、結構前から追いかけている。あまり短歌や俳句には詳しくないけど、この方は特別。 世の中には、普遍的なものを読みたい人…

青い大きなタイムズカーシェア

こないだの夜、タイムズカーシェアが夜割をやっていたので彼氏とドライブに行った。18:00以降フリータイムで基本料金990円。あまり例がないほど安いらしい。わたしの最寄りにタイムズの駐車場があり、そこで車を予約する。 「いつもより少しいいランクのやつ…

旅館に行きたいな 1

旅館に行きたいな。 女将さんが三つ指ついて出迎えるような古い旅館じゃなくて、真新しい木材のいい匂いのするような、モダンな、あまりにモダンすぎる星野リゾート界~NEO~みたいな旅館がいいな。地元の人もよく知らないまま急ピッチで工事が進み、ある朝…

シャンパンから雑煮まで 

12月28日の夜20時頃 在宅で納まった。とくに納まったという感じはしなかったが、何となくビールを飲むことで納まった感じになった。 東北新幹線のチケットは一週間前に払い戻し、帰省はやめると親に電話してある。なんやかんやこれまで毎回帰省を楽しんでい…

ウルトラアンハッピーお菓子作り

何をしているかと聞かれれば、お菓子作りをしている。 問題なのはなぜお菓子作りをしているのかということの方だ。 誰に求められているわけでもなく、自分自身が甘いものが大好きというわけでもなく、ただここ数年間、コンスタントに作り続けている。お菓子…

やさしげマダムの店・2連 

やさしい感じのマダムがやっている店に連続して遭遇したので書き残しておこうと思う。 =========================================== ここ最近、チーズのことで気が狂っていた。何かの拍子に「不思議とあまじょっぱい、見た目も味もまるで塩キャラメルのよう…

話を盗られる

人と話していて、最初はわたしの話をしていたのに、ふと気づくとぬるっと相手の話になっていることがよくある。こういうのを話を奪われるとか、盗られるというのだと思うけど、その感覚がなんか好きだ。 もう自分の話をするターンが終わったのだというちょっ…

卓球の愛ちゃんがあんなに泣いていた理由を、卓球の愛ちゃん自身も今ではあまり思い出せないのかもしれない

起き抜けにベッドの中でyoutubeを開き、卓球の愛ちゃんを見た。まだ小さい、「泣き虫愛ちゃん」と呼ばれていた頃の愛ちゃんである。それも試合の動画ではなく、テレビで明石家さんまと対決をさせられたときのやつだ。 愛ちゃんは小さくてふよふよしていた。…

インターネット分霊箱

わたしのことしかフォローしていない、フォロワー数0のアカウントがあった。こういうのを、友だちの裏垢だと思ってしまう癖がある。 友だちの裏垢。絶対本垢じゃないのにわざわざ「本垢です」と書いてあったり、「あくまで壁打ちです」とか「たんなる独り言…

日本の夏、狂っている夏

夏が来る。 ビールのCMのような夏はどこにあるんだろうと毎年思う。 何やら屋上の特等席みたいなところできゅうりやらスイカやらビールが冷えてて、誰かが「こっちこっちー!」って手招きしてる後ろで花火がドーンみたいな夏。 泡が星みたいに弾けるジョッキ…

スピッツが嫌い

何気なく向田邦子の短編を読み返していたら、主人公の女が「嫌いなもの」を列挙している箇所があった。 クイズ番組、花柄の電気製品、小指の爪を伸ばした男、豪傑笑いをする男などを挙げている中に「スピッツが嫌い」という言葉が踊っていた。(まあ、わたしも正…

∞畳ボロアパート

ボロアパートを見ると立ち止まってしまう。ベランダに干されたキャラクターのタオルケットや、出しっぱなしのサンダル、駐輪場で倒れている錆び付いた自転車。 明確な記憶はないけど、わたしもかつてボロアパートの中の人だった。 子どもの頃に母の車に乗っ…

たとえばキウイフルーツをクレソンで和えるようなこと

他人がごくごく日常的にやっている、思いも寄らない食材の組み合わせを知るのが好きだ。 好きな料理系youtuberは、夏のおみそ汁にすだちの輪切りをたくさん浮かべていた。そして椎茸とアボカドをお醤油で香ばしくソテーしていた。こういう自分では思いつかな…

サイゼリヤでひとりでワインを飲むぐらいのことがあってもよい

https://www.saizeriya.co.jp/ 会社の帰りにひとりでサイゼリヤに寄る。 街の雑踏の中を歩きながら、緑色の看板を見つけたときからわたしはなんだかぼんやりしてしまって、目が空洞になっていく感覚を抱く。あらゆる視覚情報が空洞になった目を風のように通…

おもしろい死に方について

https://www.nihon-eiga.com/osusume/furuhata/ 古畑任三郎の父は、タヒチを旅行中にヤシの実が頭に直撃して死亡したという。 わたしは子供の頃にそれを知り、その死に方に激しく憧れた。実の父の頓狂な死を淡々と語る古畑も、ひどくかっこよく思えた。 「ヤ…

暮らしのいびつ

生活するには、ちょっとしたコツが要る。自分だけにしかわからない、小さな小さなコツである。 最近新しいアパートに引っ越した。この部屋で暮らすためのコツを、やっと身体が覚えはじめた。部屋は新しいのに、エアコンは古い。リモコンは褪せたクリーム色に…

魔の1週間とひねり揚げ

わたしには魔の1週間が存在する。それは、“あのこと”ではない。“あのこと”が訪れるまえの1週間のことだ。なにも伏せなくてもいいじゃないかと憤る人もいるかと思うが、伏せるのも勝手だ。とにかく、“あのこと”のまえは酷い。いろんなことが不安になり、焦っ…

ハムをつまみ食いするときの焦りについて

夜中、どうにも小腹が減ってキッチンまで這っていき、冷蔵庫を空ける。暗闇に浮かぶスペースコロニーみたいな光の中に、ハムを発見。明日、サンドイッチにしようと思っていたそれを迷いなく開封し、1枚をべろりと食べる。ハム独特の水あめの甘さと、かどのと…

今ごろ自分の家が燃えているんじゃないかと思う

夜、自宅までの坂道を登っていると、背後からサイレンの音が追いかけてきてどんどん大きくなったかと思えば、3台ほどの消防車が立て続けにわたしを追い越した。音はゆがみながら遠ざかり、そのままわたしの家と同じ方向に消えていった。 「わたしの家燃えて…

ヨコハマ・日雇い・メモリー

スローなブキにしてくれ ブルーレイ [Blu-ray] 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2012/09/28 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る どうでもいいことばかりやたら記憶に残るというのは本当によくあることである。ついでにちょっと教えてあげるけ…

卒業・くすんだブルーのワンピース・会社員

2019年3月26日に大学を卒業し、4月から都内で会社員になった。毎日通勤したり、先輩からこぼれ仕事をもらいながらいろいろやったり、デスクで壁と向かい合いながらお弁当を食べたりしていると、つい2、3週間くらいまえには卒業式のあとの謝恩会に何を着てい…

地に足つけて生きている人間の言葉にはドライヴ感がある

地に足つけて生きている人間の言葉には、ドライヴ感がある。 一見それは意味不明の言葉であっても、たしかな重量をもったカウンターパンチとして身体に響いてくる。 小さい頃は、よく喫茶店に預けられていた。祖父が自宅の一部を改造してやっていた喫茶店で…

あの頃、公文式で苦悶していた

はい。 この鞄を見て、一瞬にして時をかけた人も多いのではないでしょうか。「くもん行っくもん♪」でおなじみのくもん学習指導教室のバッグですね。 ついこの間、この黄色とネイビーの鞄を持った子供たちが脇を駆け抜けていったとき、まさしくわたしも時をか…

テトリスに狂った男、父

この世でいちばん暇な人が誰だか、皆さんご存じだろうか。それは、今この地球のどこかでテトリスに興じている人である。 テトリスとは いわゆる「落ち物パズルゲーム」の元祖。「上から落ちてくる『4個の正方形で構成された7種類の多角形ブロック』(テト…

あなたはほうじ茶でアガれるか? おばさん群像劇『滝を見にいく』

「あんただっておばさんになるのよ」 背中にぴしゃりと投げつけられた言葉を払いのけ、「なるもんですか」と思いながらずんずんと生きていくうちに、少女たちは瞬く間におばさんになっていく。「かわいいおばあちゃんになりた~い♡」と言う少女はいても、「…

旅の恥をかき捨てると自我が崩壊する

ついこの間、所用で箱根鉄道のとある駅に行った。博物館でひとしきり見学したあと駅のホームにたどり着くと、登山の装備をした楽しげな高齢者集団や、ツーリングみたいな恰好なのになぜか鉄道に乗ろうとしている中年集団などがわらわらと憩っていてにぎやか…

その電車が銀河鉄道に変わるとき

電車に乗っているとき、ずっとこのまま居られたらと思うことがある。そう思わせる車両がたまにある。 他人の気配や視線というのは緊張をもたらすものだけど、不思議なくらいそれが無い車両なのだ。他人同士が絶妙な空気感で配置されていて、誰も各人をじろじ…