気になるあの子の頭の中は
ふつう ふつう わりとふつう
わたしはどうも小松菜奈に特別さを求めてしまうね。
ミステリアスであってほしいし、色っぽくそれでいて生々しさはゼロであってほしいし、その辺の凡人をシュンとさせるくらいの美貌と存在感をもっていてほしい。あの爬虫類みたいな鋭い目で射貫いてほしい。
頭の中もどこか変であってほしい。ちょっとくらい倫理観が破たんしていてほしい。
好きな本や映画を聞いたら、真面目に答えないでほしい。めちゃくちゃ適当に答えておきながら、実は通であってほしい。
もし小松菜奈がクラスメイトだったら授業中は物憂げに窓の外を見ていてほしいし、勉強してないのにまあまあ高得点をとってほしい。そしてサッカー部の男子とは付き合わずに、陰で教育実習の先生をたらしこんでいてほしい。それでいて浮かれることなく余裕たっぷりであってほしい。一緒に登校しているとき、「なんか学校やんなっちゃった。海見に行こうよ」って言って、サボることに怖気づくわたしに「意気地なし」と冷たく言い放ってほしい。そして卒業式では一滴も涙を流さず、卒業文集の最後のページになにかシュールなことを書いてほしい。
https://matome.naver.jp/odai/2139437238266182201/2145429710749024703
こんなふうに怒涛のごとく小松菜奈に願望を叩きつけてきたわけだけど、小松菜奈も「お、おう」って感じだと思う。わたしは小松菜奈に、かつて憧れた架空の「ミステリアスなあの子」の幻影を見ているだけであって、現実世界の小松菜奈自体に興味があるわけではないのかもしれない。
わたしは小松菜奈を「ミステリアスなあの子」として神格化して、自らに劣等感を抱くことをもはや楽しんでいるのだ。
現に今
ちなみにこの雑誌、世界観を完璧に創り上げていてすごかった。わたしが憧れるミステリアスで小悪魔的な小松菜奈像がそこにあった。さては作った人たちも小松菜奈への憧れこじらせピープルなのかもしれない。
この「bis」の七月号に載ってるショートヘア小松菜奈があんまりスンバらしいもので、髪型を真似しようと美容院に行ってきたんだけど、なぜか楠田枝里子みたいになって帰ってきた。わたしは落胆しながらもどこか安心している。小松菜奈が安易に追いつけない存在であることに安心している。小松菜奈は遠くなくてはならない。
友達と集まって色々ぼやいているとき、ふと「ああ小松菜奈になりてえ~~」と言うと皆同意してくれた。「なりてぇ~~」の大合唱となった。そして小松菜奈になったら何をしたいかとか、小松菜奈の見た目になれるならどんなハンディを背負えるかという話にまで発展した。ある者は「背毛ボーボーでもいい」と言い、ある者は「等身だけでもいいから小松菜奈になりたい」という謎の譲歩をした。最終的にはある者が「生理隔週でもいい」と言い、「アンタ、そこまで…」と一同がドン引きしてその話は終着した。わたしたちは到底なれっこない小松菜奈の神秘をたたえ、傷をなめあうことにある種の楽しみを見出していたのだ。「なりてぇ~~」と言いつつも。
このわたしたちのキモく、ささやかな楽しみが末永く続くには、小松菜奈は決して「ふつう」であってはならないのである。気になるあの子の頭の中はどうか滅茶苦茶であってくれ!!
しかしその思いむなしく、油断すると小松菜奈は「ふつう」を曝け出してくる。
わたしが創り上げた「ミステリアスなあの子」像を破壊しにくる。
ある雑誌のインタビューで「好きな音楽:K‐POP全般ですかね笑」と答えていた。ショック!!(いや、K‐POPは全然いいんですけど、それまで抱いていた小松菜奈のイメージとかけ離れていたので。)
そして追い打ちをかけるようにG‐DRAGONと熱愛した。ダブルショック!!!
そして極めつけは、POPEYEの映画特集で、好きな映画を聞かれたときの返し。
小松菜奈はクリント・イーストウッドの『アメリカン・スナイパー』を挙げた。そこまでは良い。問題はそのあとだ。
平和ボケから少し覚めて家族の強さを実感します。
感動する映画が好きなのですが、「家族の話=泣く」っていうのが自分の中にあります。家族は私にとって一番大事な存在で、あったかい気持ちにさせてくれる作品が多いので。ですが『アメリカン・スナイパー』にはそのかけがえのないつながりが戦争によって傷つけられ、歪められることを突きつけられました。実話を元にしているから、私たちが知らないところで戦争が存在していることを実感して、特にイラクの子供がおもちゃ感覚でロケットランチャーを拾ってしまうシーンはヒヤヒヤでした。
わたしの中の鈴木雅之が違う、そうじゃないと言っている。感想文かよ。ほかの人が「あえての」寅さんとか、グレムリンとか挙げてオシャレなこと言ってるというのに、この素朴な感想文。「家族の話=泣く」の破壊力。そして重要なシーンを「ヒヤヒヤ」で片づけるライト感。最近サバゲーにはまってる彼氏に連れてこられて、渋々『アメリカンスナイパー』観た量産型女子大生が帰りの喫茶店で適当に言う感想みたい。
http://noaidea.me/%E5%B0%8F%E6%9D%BE%E8%8F%9C%E5%A5%88-%E7%94%BB%E5%83%8F%E9%9B%86.html
要は、めっちゃふつう。
気になるあの子の頭のなかは、ふつう、ふつう、かなりふつうだった。
こういうわけでわたしのなかの「ミステリアスなあの子」としての小松菜奈像はもう半分破壊されつつあるのだけど、やっぱり憧れは捨てきれない。雑誌の中に、虚構の世界の小松菜奈を見るとやはり胸は高鳴る。
わたしの楠田枝里子みたいな頭の中では、「気になるあの子」がループされている。