ニートにハーブティーは要らない

ニートにハーブティーは要らない

よく深夜に更新します

崎山蒼志くんはギリギリ意思疎通できるあちら側の人である

崎山蒼志くん

 

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なぁんだよ五月雨おぉい!!!!

と思って以降、毎日のように崎山蒼志くんの音楽を聴いている。

 

わたしが崎山くんに関してたまらないと思ってるのは、彼の言葉の使い方である。

人間社会の外側からやってきたかのような、斬新な言葉の使い方をする。彼の言葉は自分の中で完結していて、受け手の事を考えているという感じが一切ない。

 

当たり前のことだけど、わたしたちは言葉を通してコミュニケーションをする。言葉を使うときはたいてい、受け手のことを想像している。自分が伝えたいことを正確に相手に伝えるためには、相手にもわかる言葉を使わなくてはならない。そして、こういう言葉を通じたコミュニケーションが成立するためには、言語感覚をある程度共有している必要がある。

 

例えば、「バナナ」というと「黄色くて細長いくだもの」というイメージをほとんどの人が想起する。「自転車」というと「二つ車輪があって、またがってこぐアレ」というイメージをみんながもっている。ディティールに違いはあれど、それぞれの言葉に対するイメージをある程度は共有しているからこそ会話が成り立つのである。

 

「バナナを食べたよ」

 

「自転車にのってどこか行こうよ」

 

こんなクソつまらないことを言う機会はほとんどないにしろ、誰にでも意味は通じる。

 

でも、

 

「こないだバナナとお茶してるときに思いついたんだけど、笑う自転車ってかわいいね」

 

なんて話す人がいたらびっくりするだろう。

 

これは完全に「バナナ=黄色い細長い果物」、「自転車=車輪が二つある乗り物」という認識をもっていない人のセリフである。でもそんなことを崎山くんは言いそうなのである。それだけ言語感覚がぶっ飛んでいると感じる。

 

しかし考えてみれば、わたしたちが当たり前のように思っている言語感覚こそが狂っているのである。ただそこにゴロンと転がっているだけのものになんとなく「石‐ISHI」と名付けてひとまとめにしている。そこには何にも根拠がない。そして皆がそう呼ぶのを当たり前のように思っている。これはめちゃくちゃ狂ってるんじゃないだろうか。

 

こういうことについてはソシュールさんが難しい言葉でごちゃごちゃ言ってるのだけれど、わたしは素直に皆が「ある言葉」に対して「ある一定のイメージ」を抱くということに対して恐怖を感じる。そして多様なイメージを、「ある言葉」でひとくくりにしていることにも。しかしそういう部分を共有していないと、人間社会では生きていけないから、そういう言語感覚で生きている。どれだけ素晴らしい鮮やかな断片を見ても、ちゃんとわかりやすい言葉で粛々と説明しないといけない。鮮やかだった光景も、なんらかの適当な言葉を当てはめた瞬間に輝きを失う。こんなんだから、自分が見てきたもの感じてきたことを話したり書いたりするときに「ああめんどくさいな」とか「どうせ伝わらないな」と思ってぐるぐる悩んでしまう。

 

でも崎山くんはそういう言語をめぐるしがらみを軽々と飛び越えて、独自の言葉で自らの心象世界をぴしゃりと表現していく。崎山くんはそもそも「わかってほしい」と思っていないからそういうことができるのだ。人間社会から進んで離脱している。もう完全にあちら側にいらっしゃる。

 

 

『爆ぜる透明』

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笑うリンゴみたいな笑い顔でむらす意味を 明日の今頃にはたくさんの笑い顔と目元の雨が笑う

 

ふつうリンゴは笑わない。

崎山くんのなかで、リンゴがどのようにイメージされているかは到底わかりっこない。でも「笑うリンゴ」という言葉を前にして、自分のなかに新しいイメージが爆ぜる。たしかに、笑うリンゴがあっていいし、そんな笑顔があっていいような気がしてくる。

 

それをさらにむらす。

先生、むらすって何ですか?もうこれは本気でわからない。

でも不思議なことにイメージは立ちのぼる。笑った顔がすこし上気してつやつやしているようなイメージ。

 

わけのわからない言葉のナパーム弾を打ち込まれて、本当に鮮やかなイメージが次々に浮かんでは消える。これがたまらない。崎山くんの言ってることは何一つよく分からないけど、自分の内部でなにか勝手に化学反応が起こっているような感じ。

 

崎山くんは音楽を通して、観客とコミュニケーションをしようという気持ちを今のところほとんどもっていなさそうである。自分の内面で渦巻いている感情を、ただ詞とギターに込めて鎮めようとしている。だからこんなにも受け手を意識しない、素晴らしく意味のわからない詞が書けるのだろう。しかしその意味のわからない詞が、たくさんの人のなかで化学反応を起こし、多彩なイメージを爆ぜ散らかしてしまった。

 

そして本当に感動するのが、これだけ狂った歌詞を書いておきながら、受け答えがめちゃくちゃ素朴で普通なところある。

 

「自転車っていいでしょ…いいですよね?」

 

普通の会話をしているときの崎山くんは、おそらくこちら側にいる。

半分自己を引き裂かれそうになりながらも、こちら側にいてくれている。

 

 

 

 

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