ニートにハーブティーは要らない

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よく深夜に更新します

架空の天才子役そよかぜちゃん

兄の話をしよう。

 

明日の早朝、なぜかはるばる青森からわたしの家に来るらしいので、思い出を振り返りたくなった。

 

兄は色が黒く、太っていた。高校のときはラグビー部だったが、兄こそがラグビーボールのようだった。

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顔はこのビッグボーイのキャラクターを色黒にした感じで、すこしバタくさかった。

 

わたしの通っていた高校は、入学したての一年生の試練として、上級生がさんざんいびってくる厳しい応援練習があった。そのとき兄の同級生たちが「ゴリラの妹はどこだ」と見物しに来た。そして「あんまり似てなくてつまらない」と解散していった。

 

兄はわりとナメられてはいたが、おもしろいキャラとして存在していたらしかった。でも学校にいるとき以上に、家庭内での兄はひょうきんものだった。毎日のように謎のネタみせタイムがあった。

 

わかりやすく言えば、ロバート秋山YouTubeに公開しているクリエイターズ・ファイルみたいなことを、家族に向けて何年も前からやっていた。しかも秋山がよくやる赤ちゃんみたいな笑い方を、先にやっていた。

 

兄はいくつもキャラを持っていた。

 

あるときは、デカくてトロいが怪力で、小さな生き物たちを守っている善良な森の怪物だった。兄は、トロールのように「ウォゥ…」と低音で唸るように鳴きながら、その怪物を演じていた。ストーリーとしては、星野リゾート的な会社が森を破壊しに来て、必死にそれに抗おうとするも、最後にはすべてを悟ってリスやウサギなどの小さな生き物たちを胸いっぱいに抱えながら森と共に姿を消すというものだった。これはあまりの切なさに泣いた。そしてふと我に返った。「こいつ(兄)何やってんだ」と。

 

そのほか、なんでも介入してくる親戚のおじさん、一日白菜一切れで地下収容所で強制労働させられているひと、地獄で行われているダンストーナメントの司会の鬼など多彩なキャラクターを披露してくれた。そのどれにも不気味なほど感情がこもっていた。笑いつつも「兄はちょっとおかしいのでは」という一抹の不安を抱えたこともあったが、兄は滞りなく学校生活を送っているようだった。

 

あるとき、兄に天才子役が憑依した。絶賛色黒ゴリラ中だった、高校生の頃である。

 

そのときはるかぜちゃんこと春名風花さんという子役が、ツイッターを中心に炎上して注目を集めていたことに影響を受けたのだと思う。

 

唐突に「そよかぜちゃん」を名乗りだした。

だみ声で、「そよかぜちゃんは、大人の言うことを聞きます!」とか言っててコワかった。そよかぜちゃんから丁寧にヒアリングすると、心の奥底では大人を信じていないこと、泉ピン子に憧れていることなどが明らかになった。そしてSNSできちんと顔を出して、意見を発信することの重要性についてそよかぜちゃんなりの見解を述べてくれた。ここまで、幼くしてアンチを抱えながらもしたたかに芸能界をわたっていく覚悟をもった天才子役に憑依できるだろうかとわたしは驚嘆した。あまりに兄はイカれていた。ときどき兄も我に返って、「こういう子役いるよね」といったことをもごもごと言うのだけど、それにしてもイカれていた。

 

兄は愉快なひとだが、こんな調子なので常に親が心配していた。大学に入ってからは、一年生の頃に主にパチンコなどで好き勝手しすぎたため、めちゃくちゃ厳しい歴史ある学生寮に強制的に送り込まれていた。(今はむしろ親にまったく心配されずに育ったわたしの方が、ヤバめの状況になっている。親よ、すみません。)

 

兄は親の心配を裏切り、サササッと勉強して国家公務員になった。

自称そよかぜちゃんだった兄が、お国のために働いているのだ。

この国ははたして大丈夫なのだろうか。