ニートにハーブティーは要らない

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思ったことを書いています

年齢オブジョイトイという暇なハガキ職人みたいな名前が生まれた背景

 

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 年齢オブジョイトイという滑り気味のハガキ職人のような名前でブログを始めて、二ヶ月ちょっとになる。この名前、ダサくて意味不明だけど気に入っている。

 

 ハガキ職人の考える名前って、「どうにかこの世に一つのシュールな名前が欲しい!」という切実さに満ちていて好きだ。彼らは同じ切実さを持つばっかりに、似たような名前になってしまう。まず考えられるのは、「サイケデリック神社」とか、「酒粕ファンタジア」とか、カタカナ語と熟語を無意味につなぎ合わせたおもしろ風の名前である(これには年齢オブジョイトイも属している)。それか日本によくある苗字を無意味に使った、「ピューと吹く小松」とか「凛として三船」などもありそうである。あとは「おかゆは飲み物」とか「はと飛ぶゆうべ」などのほのぼのシュール系など。この世にペンネームは数あれど、ハガキ職人の名前の大半はざっくりと類型化できそうである。

 

 

 「この世に一つのシュールな名前」を求めて、一生懸命考えて、たどり着くのは似たり寄ったりの滑り気味なペンネーム。そのどんぐりの背比べのなかで他人から笑いを取るのは難しい。たまにペンネームだけでおもしろいひとがいるけど、あれはすごいことなのだ。

 

 こうなればもう自分で満足していればいいではないかと思う。わたしは年齢オブジョイトイに満足している。というのもこれは、わたしをかつて大爆笑させた言葉だからだ。

 

 その夜、わたしは親友の部屋で飲んでいた。そこにはわたし(前髪が長い女。よく「奥さん」と話しかけられるのが悩み。)と親友のパン祭り(前髪の長い女。酔っぱらうと「コミケに出店してみたい」というささやかな夢を語りだす。)と、わたしの高校時代の後輩の根暗モグラ(前髪の長いバンドマン。顔が大きく、服装がダサい女が好き。)が居た。この三人で飲んでいると、楽しいは楽しいけどあまり明るい話はなかった。「うまく行かない人は、前髪を切りなさい」みたいな啓発本がそろそろ書かれてもいいのではないかと思った。

 

 みんなてんでばらばらのことをボヤボヤとしゃべっていた。パン祭りは好きなゲームのせないずみという推しキャラについて語りだし、頼んでもいないのに押し入れからグッズを引っ張り出していた。わたしは「歯ブラシにも、キモい歯ブラシとキモくない歯ブラシがある」という意味不明の話をしていた(わたしの思うキモい歯ブラシ

http://www.cainz.com/shop/g/g4901221819609/ただし磨き心地はめちゃくちゃいい)。根暗モグラは何を言っていたか覚えていない。調布に住んでいることは覚えている。

 

 そんな各人が好き勝手に思いついたことを口にするまとまりのない空間で、互いの顔を見ることも忘れていたけど、ふとパン祭りの方を見ると妙なポージングをしていた。M字開脚をするようにしゃがみ、首をふくろうのようにもたげ、「uh-huh?」みたいな表情をしてこちらを見ていた。そのアーハンの表情と、見事なM字開脚が面白くて、「なんかインリン・オブ・ジョイトイみたいw」とろれつの回らない口調でつまらない事を言った。するとアーハン?の表情のまま「ハァ?年齢オブジョイトイってなんだよ」とつぶやくように言った。もう誰も会話をする能力を持っていなかったのだ。

 

 でもなぜか1秒後には全員が「年齢オブジョイトイ」という言葉に爆笑していた。「なんだよそれ笑」と、思考停止の三人はまるでそれしか知らないかのように笑い続けていた。出口を失った感情をすべて「年齢オブジョイトイ」という、偶然発生した謎の言葉が吸収していた。みんな「いや、年齢オブジョイトイって何だよ!」と言っていれば、交わっていられるような気がしていた。わたしは年齢オブジョイトイをブログか何かのペンネームにしていいかと、パン祭りに許可を求めた。パン祭りも「忘れないように書いとけよ」と紙切れを渡してきて、それに汚い字で「年齢オブジョイトイ」と書いた。

 

 翌朝、ポケモンかなにかのぬいぐるみを抱いて寝ているパン祭りにそっと別れを告げ、根暗モグラとわたしは駅まで歩いた。最悪の口内環境を和らげるため、コンビニに寄り各自お茶やガムなどを買った。駅に着くと、根暗モグラとは反対方向の電車に乗った。昨日あんなに笑ったのがまぼろしのようだった。

 

 ガムの包み紙を探してポケットに手を突っ込むと、ボロボロになった紙切れが出てきた。「年齢オブジョイトイ」と書かれてあった。たしかにあの部屋で笑っていたのだ。あんなにおもしろかったのに、翌朝にはこんなにおもしろくなくなるなんて。さみしいなあと思った。でもペンネームにするって決めたのだからちゃんと使おうと自分に誓った。

 

 今はなんだかんだ「年齢オブジョイトイ」を気に入っている。おもしろいとかではなく、なんか良い感じだと思えてくる。言葉って、発した直後は「すっごいイカすこと言った」と思っていても、少し経つと「さっきのダサかったな」と恥ずかしくなり、また時間がたつと「まあまあ良かったかも」と思えるようになる。そしてブログに書いてる日記もそうなのである。その一瞬恥ずかしくなる段階のときに、勢い余って消したりなんかするとあとで「やっぱ結構よかったかも…」と思えてきてしまうのだ。だからどんなめちゃくちゃなことでもちゃんと残しておこうと思う。「年齢オブジョイトイ」も変えないでおこう。