ニートにハーブティーは要らない

ニートにハーブティーは要らない

思ったことを書いています

Nissyこと西島隆弘さんの黒い乳首を前にしながら、クレープを粛々と売るお姉さん

ある日、渋谷駅が茶褐色だった。よく見るとそれはNissyの裸体だった。

 

 

特別付録DVD付 anan (アンアン)2018/08/15・22 No.2114[愛とSEX]

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いつも何かしらの広告がジャックしている、渋谷ちかみちの柱群。

 

その日はAAAのNissyがanan「SEX特集」で見せたヌードが一面を飾っていたのだ。大樹のような柱が、ものすごく近い感覚で並んでいて、そこにはNissyのあんな姿やこんな姿が映し出されている。暴力的なセクシーゲリラ。

 

麗しい外国人女性に今まさにKissしようとするNissyのぽってりとしたコーヒー豆のような唇、茶褐色に焼けた肌、女性と絡みながらもなやましげにこちらを見据えてくる眼差し、あるかなきかのわき毛。なんの心構えもない状態で、いきなりセクシー写真を目の前バーンと差し出されてしまい、どんな顔でそこを通ればいいのかと戸惑ってしまった。

 

とっさに「あっ、すみません」と思った。

強制的に見せられているにも関わらず、なんかすんませんという気持ちになった。

ほかの人も微妙に心をかき乱されているのか、いつもの雑踏がすこしだけランダムな動きをしているように思えた。まるでコソ泥のような速さで、写真を撮影している妙齢のマダムもいた。

 

Nissyのヌードは地下道に燦然と輝き、道行く人々の心の中にほんの少しのうしろめたさを植え付けていた。

 

何よりうしろめたさを刺激しているのは、Nissyの茶褐色の身体にぽつねんと出現している、真っ黒な乳首であった。

 

男性の乳首はそもそも「見えていいもの」として取り扱われている。男性が上半身裸でうろうろしていても、あまり気にならない。しかしそれは乳首が存在感を放たない場合である。通常男性の乳首は「あってないようなもの」として扱われている。だからわたしたちは男性が上半身裸でいても乳首を注視することもないし、なんらうしろめたい気持ちを抱くこともない。

 

しかしNissyのそれは強烈な違和感を放ち、ブラックホールのようにわたしたちの視線を吸い寄せた。そしていくばくかのうしろめたさと、「み、見てねぇし!」という誰にするでもない無意味な弁解と、「もう一度見たい、いやダメだ」という謎の葛藤をもたらした。

 

Nissyの黒い乳首を見るまいと視線をそらした先に、クレープ屋があった。コロッとした形に丸めたクレープを売っているあの店である。その店は柱群のど真ん中、Nissyの茶褐色に取り囲まれていた。

 

お姉さんは虚無を見つめながら、クレープを売っていた。彼女はもうすでにNissyの裸体に関してベテランになっていた。

 

そのまなざしが黒い乳首に惑わされることはない。

お姉さんは朝から晩まで、粛々とクレープを売り続けていたのだ。

Nissyの茶褐色に抱かれながら。